第170回 作家の自筆原稿

以下は下野新聞(2025年5月9日)に掲載された拙文です。

作家の自筆原稿自体が芸術作品

4月11日付本紙に、夏目漱石の自筆原稿が発見されたという記事があった。とても興味深い内容だった。私は作家の自筆原稿を見るのが好きで、文学館や作家の企画展に行くことが多い。

文学館や企画展では、ガラス越しとはいえ、明治や大正、昭和の作家の自筆原稿から

執筆に対しての熱い思いを受け取ることができる。一番印象に残っている自筆原稿は、村上春樹さんのデビュー作『風の歌を聴け』だ。1990年に、東京池袋の東武百貨店で開催された「昭和の文学展」で見た。原稿用紙に万年筆できちょうめんで整った文字で書かれていて、今でも脳裏に焼きついている。

作家の自筆原稿は、それ自体が芸術作品だ。現代の作家さんは「手書き派」は少数だそうだ。自筆原稿を見る楽しみがなくなってしまうのは残念だが、それも時代の流れなのだろう。

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