『徒然草』の魅力

 古文を読むのは非常に楽しいものです。
 最近、私は就寝前に古文を読んでいます。
 『今昔物語集』、『伊勢物語』、『土佐日記』、『大鏡』、『方丈記』、『平家物語』、『南総里見八犬伝』などなど、時代とジャンルを問わず、その日の気分によって、好き勝手に読んでいます。
 「古文」は「勉強」というイメージがあって「嫌いだ」という人もいるかもしれません。また、「21世紀に、どうして古くさいものを読む必要があるのか」と思う人もいるでしょう。
 しかし、実際に古文を読んでみると、はるか昔の日本人の心情も、現代を生きる私たちと何ら変わることはないということが分かります。
 みなさんには、まずは現代語訳でいいので、古文に親しんで欲しいと思います。
 数ある古文の中でも特におすすめなのが、兼好法師(1283?~1352?)の『徒然草』です。鎌倉・南北朝時代の歌人・文人であった兼好法師の書いた『徒然草』は、243の短い章段から成る随筆集です。内容は、人生観、自然観、趣味など、多岐にわたっています。
 私は高校時代に『徒然草』に魅了され、それ以来、ずっと愛読しています。
 『徒然草』は人生指南の書でもあります。これを読んでいれば、人の道を踏み外さなくてすむのではないかと思います。
 どのような章段があるのか、いくつか例を挙げてみましょう。
 ※以下の章段名と現代語訳は、『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 徒然草』(角川ソフィア文庫)のものです。

「友あれど心の友はなし」(12段)、「思い出は心をうるおす」(29段)、「悪筆は個性の表現」(35段)、「ばかを嘲る大ばかもの」(41段)、「会話のマナー」(56段)、「人生はこの一瞬の積み重ね」(108段)、「勝つと思うな、負けぬと思え」(110段)、 「良友と悪友の条件」(117段)、「訪問のマナー」(170段)、「社交の極意」(233段)……。

 どうでしょうか、上記の章段名を見ただけでも、興味深いと思いませんか。
次の第13段「読書は古人との対話」は、わずか3文の非常に短いものです。その最初の一文を紹介しましょう。

 独りともし火のもとに文を広げて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。
(独り灯火のもとで読書して、作者や登場人物など、知らない昔の人を友とするのは、何よりも心が安らぐ。)

 現実の人間関係に不満を持っている人も、読書を通して、古今東西の作者や登場人物と時間を共有すれば、「少しも寂しくはないぞ、幸せな気分になるぞ」という内容で、兼好は読書のすばらしさを述べています。
 ちなみに、尚朋スクールの塾名は、「古代の賢人を友にする」という「尚友」に由来します。
 塾生のみなさん、是非、「徒然草」を読んでみて下さい!

『Step By Step 2月号 第208号』(2015年2月2日発行)より