第72回 2023年の3冊

今日は大晦日、そして私の◯◯回目の誕生日。
私は埼玉西武ライオンズのファンクラブに入っているので、球団からお祝いのメールが届いた。
さらに、外崎修汰選手のお祝いのメッセージをいただいた(動画)。
動画を繰り返し再生して喜んでいたら、妻が「なんかむかつく!」と呆れていた。

さて、今回は今年最後のブログとなります。
最後のテーマは「2023年の3冊」です。

2023年もたくさんの本や漫画を読んだが、私にとってのベスト3は以下の通り。

  1. 島田雅彦著『パンとサーカス』(講談社) ※ブログ第41回
  2. 門井慶喜著『文豪、社長になる』(文藝春秋)
  3. 宮島未奈著『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社) ※ブログ48回

1と3の本についてはすでに当ブログで書いたので、興味のある方はそちらをお読み下さい。

門井慶喜さんの『文豪、社長になる』について
これは作家で文藝春秋を創刊し、芥川賞と直木賞を始めた菊池寛が主人公の歴史小説。
菊池寛という人物は、とにかくエネルギッシュで、次々と困難が生じるが、それを持ち前の行動力で解決してゆく。
菊池寛という人物同様、門井さんの小説もおもしろくて、読み始めると最後まで止まらなかった。
なお、菊池寛の小説でとくにおもしろいと思った作品は『無名作家の日記』だ。
これはオススメです。

◆補足1
島田雅彦著『パンとサーカス』のブログを書いた時点では、今の政治の状況はまったく想像がつかなかった。
現在、自民党議員による裏金問題が表沙汰になり、東京地検特捜部に安倍派幹部が次々と任意徴収されている。
悪いことをした政治家は罰せられ、日本の政治が正しい方向に進むことを願うばかりだ。
世の中は勧善懲悪であって欲しい。
とくに、国民の生活に直結する政治については。
そして、国民の生活を第一に考えてくれる政治家に政治を託したい。
そのためには、国民一人ひとりが「政治を自分のもの」として考えることが大切なのだ。

◆補足2
宮島未奈著『成瀬は天下を取りにいく』について
2024年の1月24日に、続編『成瀬は信じた道をいく』が発売されるそうだ。
この情報を知っただけで、私はわくわくしている。
それほどすばらしい作品なのだ。

2023年間もお世話になりました。
2024年も、ほそぼそとブログを書いてゆきます。
引き続き「塾長の気まぐれ日記」をご愛顧下さい。

みなさま、良いお年をお迎え下さい!

第71回 ディケンズの「クリスマス・キャロル」を読む

毎年、クリスマスが近づくと読む本がある。
19世紀のイギリスの作家であるチャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」だ。

私は「クリスマス・キャロル」を3冊持っている。
村岡花子訳の新潮文庫版、中川敏訳の集英社文庫版、そして足沢良子訳の小学館「てんとう虫ブックス」版だ。

「てんとう虫ブックス」版は子供向けなのでとても読みやすい。
今年はこれを、12月24日から25日にかけて読んだ。

けちん坊でひねくれ者のスクルージの前に、会計事務所の共同経営者だったマーレイ(亡霊)が現れる。
その後、マーレイの言った通り、三人の幽霊がスクルージの前に現れ、彼を過去、現在、未来へと連れてゆく。
自分の過去、現在、未来を見たスクルージは悔い改めて……。

「クリスマス・キャロル」は、読めば幸せな気分になれる物語だ。

当時、大英帝国として世界で最も栄えたイギリスは、その一方で酷い貧困もあったのだ。
そのような視点でこの物語を読んでみると、また違った感想を持つことになる。

それはさておき、年末に「クリスマス・キャロル」を読んで、「幸せ」について考えてみるのも良いかと思う。

中1・2生対象 自習室開放について

中学1・2年生を対象に、明日から自習室を開放します。
参加申込書を提出していない塾生も参加可能です。
参加を希望する塾生は、塾長のLINEに連絡して下さい。
冬休み中も学習時間を確保するために、尚朋スクールの自習室を積極的に利用して下さい。充実した冬休みにしましょう!

第70回 「文晁と北斎」展

栃木県立美術館で開催中の「文晁と北斎」展が明後日の24日に閉幕する。

10月28日、私はこの展覧会に行ってきた。
もちろん、すばらしい絵を画集で見るのも良いけれど、やはり本物は違う。
ガラス越しとはいえ、圧倒的な力を感じ、エネルギーをもらえるのだ。
開催中、あと1回くらい行こうと思っていたが、都合がつかず、どうやら行かないで終わりそうである。
それでも、谷文晁と葛飾北斎の肉筆画や版画を生で見ることができたことは今年の収穫だった。
北斎は版画が有名だが、肉筆画もとても良かった。

10月20日に父が急逝し、24日に葬儀・告別式を行うことになった。
いろいろなことを短期間で決めなければならず、また、葬儀が終わってもすべきことが次々と出てきて、かなり大変だった。
心身ともに疲れ切っていた時期に、半日だけでも浮世のあれやこれやを忘れて文晁と北斎の作品に没頭できた。本当に救われた気がした。

「文晁と北斎」展に再度足を運ぶことはできないが、購入した図録を見て楽しみ、行った気になろうと思う。

第69回 山田太一著『空也上人がいた』

山田太一著『空也上人がいた』(朝日新聞出版)を読んだ。

主人公は、つい最近まで特養老人ホームで働いていた27歳の青年。
本人が大きなミスをしてしまい、自ら仕事を辞めてしまう。
そんな時、元同僚で40代半ばのケア・マネジャーの女性に新しい仕事を紹介される。
紹介されたのは、81歳の男性の個人介護。

読み始めると、ストーリーは興味深く、深い人間観察があり、最後まで一気に読んでしまった。
山田太一さんが描く、登場人物たちの独特の会話もとても心地よかった。
改めて、山田さんは真のストーリーテラーなのだと思った。

「空也上人がいた」というタイトルがすごい。
「空也上人」は、平安時代中期の僧で、京都の六波羅蜜寺にある「木造空也上人立像」が有名である。
高校で日本史を勉強した人なら誰でも思い浮かべることができると思う。
私は2回ほど実物を見たことがある。
粗末な草履を履き、口から6体の小さな阿弥陀仏を吐き出している木造は有名だ。
その「木造空也上人立像」の絵が、本のカバーに描かれている。
そして、この木像が物語の鍵となっているのだ。

山田太一さんがこの小説を書かれたのは2011年、70代後半だ。
しかし、20代の作家が書いたといってもおかしくないくらい若々しい作品なのだ。
驚きの結末に、人間というもの、生きるということ、死ぬということなど、いろいろと考えさせられた。

山田さん脚本のドラマはたくさん見てきたが、小説は数えるほどしか読んでいない。
山田さんの小説も積極的に読んでみようと思った。

2学期期末テストの結果について

12月15日(金)に田野中学校の期末テストが終わりました。
これですべての中学校の2学期期末テストが終わったことになります。

現在、当塾には、益子中生、田野中生、七井中生、真岡東中生の生徒が通っています(中学部)。
今年の2学期期末テストは各中学校の実施日がばらばらだったため、「2学期定期テスト対策学習会」は3回に分けて実施しました。

田野中以外は成績表が出たため、塾生たちが成績表を持ってきました。
全体としては、ほとんどの塾生が前回の定期テストから順位を上げています。
「学年順位で10位以上あがった」という塾生が6~7人いました。
入塾してから結果が出るまでの期間は個人差があります。
しかし、休まずに塾に通っている塾生は必ず成績が上がっています。
結果が出るまでに時間がかかっている子は、その期間は辛いものです。
そのときに、他人と比較するのではなく、「昨日の自分と比べて成長できているか」という視点を持ち、自分を信じて努力することが大切です。
2学期もあとわずかです。
塾生たちには一日一日、やるべきことをしっかりとやって欲しいと思います。

第68回 額賀澪著『青春をクビになって』

額賀澪さんの『青春をクビになって』(文藝春秋)を読んだ。

主人公は35歳のポスト・ドクター、専門は国文学(古事記)である。
彼は大学の非常勤講師をしているが、学内事情から任期内にもかかわらず次年度の契約を打ち切られてしまう。
次の職場をどうしようかと途方に暮れていた矢先、専門が同じで10歳年上の先輩が大学の研究室から貴重な文献(古事記)を盗んで失踪してしまう。

かなり以前から、大学の博士課程を出ても安定した職を得られないことが問題になっている。
「高学歴プア」という言葉があるくらいだ。
とくに人文・社会科学系を専門とする研究者が厳しい。
大学教員として正式採用されるのは、ほんの一握り。
多くの人が人生を棒に振ってしまっているのが現状だ。

仕事を失い、研究者の道を諦めるという選択をする主人公。
当然、物語の内容は明るくはない。
しかし、不思議と暗い気持ちにはならないのだ。
自分の「青春」を終わらせる、「青春」に決着をつける主人公。
心地よい読後感だった。

額賀さんの他の作品を読んでみたいと思った。

第67回 山田太一さん、逝く

11月29日、脚本家の山田太一さんがお亡くなりになった。
89歳だったそうだ。

山田太一さんは大好きな脚本家だった。
私が、山田さん脚本のドラマをちゃんと見たのは「ふぞろいの林檎たち」だ。
これは高校生の時に再放送で見た。
その後、5年おきくらいにDVDを借りてきて見ている。

「ふぞろいの林檎たち」は、おちこぼれ大学生たちの青春群像劇。
出演は、中井貴一、時任三郎、柳沢慎吾、手塚理美、石原真理子の各氏。
ドラマでは「いとしのエリー」をはじめとしたサザンオールスターズの曲が効果的に使われていて、本当に印象に残る作品だった。

山田さんの脚本は、セリフの一つ一つに重みがあり、人間の葛藤と屈折が、深く、リアルに描かれている。
そして、弱くても一生懸命に生きている人たちに対して、優しい眼差しがある。

山田さんを偲んで、私が所有している「岸辺のアルバム」のDVDを見返し、「ふぞろいの林檎たち」の文庫(脚本)を読み返そうと思う。

山田さん、たくさんの素敵な作品を残してくださって、本当にありがとうございます。

合掌