1月30日の朝刊に、J・D・サリンジャーの訃報記事がありました。享年91歳。自然死だったそうです。この記事を目にしたとき、「ついにその日が来たか」と思いました。
サリンジャーは20世紀のアメリカ文学を代表する作家です。以下、新聞記事で彼の略歴を紹介しましょう。
サリンジャーさんはポーランド系ユダヤ人とアイルランド系の両親のもと、1919年、ニューヨーク・マンハッタンに生まれた。10代で執筆をはじめ、40年、ストーリー誌に掲載された「若者たち」でデビュー。戦後、ニューヨーカー誌に発表した短編が評判になり、51年の「ライ麦畑でつかまえて」は大ベストセラーになった。成績が悪く高校を追い出された主人公の屈折した感情を、攻撃的な言葉で表現し話題になった。
しかし身辺が騒がしくなったことを嫌った同氏は53年、突然、ニューハンプシャー州の田舎町で隠とん生活に入った。(後略) 「毎日新聞」(2010年1月30日)
「隠遁」とは、俗世間を逃れてひっそりと隠れ暮らすことです。日本でいえば、『徒然草』の吉田兼好、『方丈記』の鴨長明などが隠遁生活を送っていました。
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(野崎孝訳、1984年、白水社)は、私の愛読書です。初めて読んだのは大学1年生のときでした。その後、数え切れないほど読み返しました。
大学3年生の夏休みに、約1ヶ月間、アメリカのモンタナ州立大学での語学研修に参加しました。これに参加したのも、『ライ麦畑』を読み、アメリカを肌で感じてみたいと思ったからです。もちろん、当時からいろいろと問題を抱えていた国でしたが、この頃までのアメリカは、元気があり、魅力的な国でした。今のアメリカからは、ちょっと想像がつかないかもしれませんが。
この語学研修中に、地元のショッピングモールの中にあった書店で、『ライ麦畑』のペーパーバックス『THE CATCHER IN THE RYE』を、3ドル95セントで買ったのも懐かしい思い出です。 2003年には、村上春樹さんによる新訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)が出版され話題になりました。私個人としては、野崎孝さんの訳の方が好きです。
この小説、発表されてから60年ほど経つのに、いまだに世界中で読まれているのです。永遠の青春小説なのですね。みなさんも、高校生になったら、是非読んでみて下さい。
なお、野球を通して、古き良きアメリカを描いたファンタジー映画「フィールド・オブ・ドリームス」(1989年)に出てくるテレンス・マン(映画の中では黒人)のモデルはサリンジャーです。
この映画も、そして、この映画の原作『シューレス・ジョー』(W・P・キンセラ著、永井淳訳、文春文庫)もおススメの一冊です。是非、いつか読んでみて下さい。
『Step By Step 2月号 第145号』(2010年2月4日発行)より