第12回 五木寛之著『捨てない生きかた』を読む

五木寛之著『捨てない生きかた』(マガジンハウス新書)を読む。

「断捨離」とか「終活」と言われる時代である。そんな時代に、五木氏はあえて「捨てない生きかた」を提案する。

氏は、身の回りの愛着ある「ガラクタ」こそ「人生の宝物」であると言う。
このようなガラクタは依代(よりしろ)であり、生活にそれらの物があることにより、これまでの自分の人生の様々なことを思い出し、生きる元気が出てくると言う。
「人生百年時代は、モノを依代に生きる」ということらしい。
ただし、すべての人が自分のようにすべきだというのではなく、こんな生き方があってもいいのではないかと提案しているのだ。

私も、五木氏の意見に一票である。
そして、この本を読んで、ずいぶん前にラジオで耳にした以下のエピソードを思い出した。

ある高齢の女性が、引っ越しを機に「終活」しようと思い立ち、さまざまな物を処分しようと片付けを始めた。とりあえず処分すべき物を段ボール箱に詰め込んだ。
そして、新しい家に住み始めたところ、急に元気がなくなってしまった。
息子さん夫婦が心配し、いろいろと考えた末に、段ボール箱から本や物を取り出し、その女性の部屋に並べたり置いたりした。
すると、それまで気分が沈みがちだった女性は、みるみる元気になり、以前のように戻ったそうなのである。

「捨てない生きかた」もなかなかいいものだ。
ただし、何でもかんでも捨てずにとっておくと、ゴミ屋敷になってしまう。
残しておくべきものと処分すべきものの取捨選択が難しいところである。

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