鈴木忠平著『虚空の人 ~清原和博を巡る旅』(文藝春秋)を読んだ。
これは、元プロ野球選手であった清原和博を4年間にわたって取材し書かれた本である。
私は今年の1月に、鈴木さんの前著『嫌われた監督 ~落合博満は中日をどう変えたか~』(文藝春秋)をたいへん興味深く読んでいたので、今回も楽しみにページを繰った。
高校野球のヒーロー、プロ野球でも活躍した清原和博は、現役時代から素行の悪さでも有名であった。
引退後、タレントとして活動していたが、素行の悪さはエスカレートし、ついに、覚醒剤に手を出してしまう。
そして、2016年に逮捕された。
この本は、逮捕後の2017年初夏から約4年間にわたっての記録である。
清原本人だけでなく、彼に関わった人々を取材することで、人間・清原和博がくっきりと浮かび上がってくる。
裏表のない明るさ、無邪気さ、繊細さ、未熟さを持った人間。
良く言えば「ピュア」、悪くいえば「精神的に未熟」ということだろう。
「KKコンビ」の桑田真澄との関係、桑田への複雑な思い、そしてドラフトの裏側なども書かれていてたいへん興味深かった。
2020年6月に、清原和博の執行猶予期間は満了した。
しかし、今も日々、心身の闘いは続いているという。
『虚空の人』は期待を裏切らない作品であった。
※読みやすさを考慮して、本文中、清原和博と桑田真澄両氏の敬称を略した。