島田雅彦著『パンとサーカス』(講談社)は、ハードカバーで557ページの大著だ。
2020年7月31日から2021年8月29日に、北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞に連載されたものを、加筆、修正した上で2022年3月に出版された。
この本を、飽きることなく一気に読んだ。
帯の裏側には以下の4氏による推薦文が書かれている。
前川喜平氏(元文部・文科官僚)
日米同盟という名の永続占領から自由日本を解放する革命戦士たちの叙事詩
鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
スケールの大きな謀略小説であり、極辛の政治風刺劇であり、極太のエンターテイメントである
立川談四楼(落語家、作家)
私たちが夢想する革命に立ち上がる主人公に快哉を叫んだ!
永江朗(著述家)
パンとサーカスさえ与えておけば国民はおとなしくしているなんて思っているヤツらに一泡吹かせたい
腐りきった日本の政治、そんな政治を終わらせるべく、二人の主人公が立ち上がり、彼らを支える仲間たちが立ち上がる。
読み進めていくと、この政治家のモデルは元首相のあの人物だなとか、この元右翼で大物のィクサーはあの人物だなとか、なんとなく分かってくる。
その点もおもしろかった。
政治の裏側、日米関係の裏側なども書かれていて、エンターテイメントでありながら、政治の勉強にもなる。
この小説のすごいところは、安倍元首相の銃撃事件前に書き始められたということ。
鋭い作家が書いたフィクションが時間をおいて現実になるということは良くあることだ。この作品もそのような印象を受ける。
いつか映画化されるのではないかと思う。
安倍元首相の銃撃事件以降、日本の政治の闇が次々と暴かれている。
そして、国民不在の日本の政治が、これほど劣化していたという現実をつきつけられている。腐りきった日本の政治は、この物語のようにまともな方向に進むのだろうか。
島田雅彦さんのメッセージをキャッチしつつ、是非、多くの人に読んで欲しいと思う一冊である。