第136回 枡野浩一全短歌集

先日の歌会の時に、同じ短歌結社の大先輩Mさんが一冊の歌集を貸して下さった。

『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』(左右社)である。

歌集のタイトル自体が短歌なのだ。

おもしろかった。
とくに気に入った歌を53首筆写した。
その中かから、さらに選んだ歌が以下の5首だ。

こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう(P7)

なにごとも向き不向きってものがあり不向き不向きな人間もいる(P14)

野茂がもし世界のNOMOになろうとも君や私の手柄ではない(P30)

しなくてはならないことの一覧をつくっただけで終わる休日(P184)

殺さずに生きてこられてよかったな だれかのことも 自分のことも(P353)

歌集のほとんどは自費出版なのだが、枡野さんの歌集やエッセイ集などは商業出版だ(と思う)。これは本当にすごいこと。
実際に、お金を出しても読んでみたいと思う本なのだ。

現在は芸人もされているらしい。
歌人の枠をはみ出したその生き方は、以下の一首にあらわれている。

切り売りというよりむしろ人生のまるごと売りをしているつもり(P230)

「すごいなぁ」と感心するばかりなのである。

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