第153回 白蔵盈太著『一遍踊って死んでみな』

白蔵盈太著『一遍踊って死んでみな』(文芸社文庫)を読む。

白蔵さんの作品を読むのは初めてだった。

一遍は鎌倉仏教の時宗の開祖だ。
しかし、一遍自身が教団を作ったわけではない。
一遍の死後、彼の弟子たちが教団を組織したのだ。

遊行上人と呼ばれている一遍は、「踊り念仏」で有名だ。
「捨聖」とも言われていて、死ぬ直前に、自分の身の回りのものすべてを燃やしてしまった。
かなりぶっ飛んだ人である。

この小説の主人公は、ロック好きの高校生のヒロ。
彼は下校途中に雷に打たれ、鎌倉時代にタイムスリップしてしまう。
そこで一遍と出会い、魅了され、一遍の死の直前まで行動をともにする。

物語はヒロの視点で進んでゆく。

「念仏は現代のロック」という視点がおもしろかった。
確かに、言われてみればとても似ていると思う。

とにかくおもしろく、一気に読み終えてしまった。
文体も読みやすく、歴史小説や時代小説に馴染みのない中高生にも楽しめる作品だ。

もちろん、実在の人物とはいえ、人物像は作者が作り上げている。
けれど、「一遍って、こんな人だったかも」と思ってしまうくらい説得力がある。
最高のエンタメ小説だ。

白蔵さんの歴史小説をもっと読みたいと思い、さっそく葛飾北斎が主人公の『画狂老人卍』(文芸社文庫)を注文した。
今から楽しみである。

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