照沼康孝著『日本史教科書検定三十五年』(吉川弘文館)を読む。
副題は「教科書調査官が回顧する」。

研究者であった照沼氏は、大学での職を得るまでの腰掛けのつもりで文部科学省の教科書調査官となる。
結局、この仕事を退職するまで行うことになった。
教科書検定で一番問題になる教科は「歴史」、とくに「日本史」だ。
それは、現代史が政治と深く関わってくるからだ。
家永教科書裁判、新編日本史問題、従軍慰安婦の記述、新しい歴史教科書など、さまざまな問題に対して、教科書調査官たちがどのように対応してきたかがよくわかった。
教科書調査官たちは、かなりのストレスを抱えて仕事をしていたようだ。
新聞やテレビの報道は表面的なことしか扱えていないということもわかった。
この本の出版社が、日本史学専門の吉川弘文館というのが良い。
たいへんに興味深い一冊だった。