第164回 永井紗耶子著『女人入眼』

永井紗耶子著『女人入眼』(中央公論新社)を読む。

ときは鎌倉時代、物語は京の六条殿に仕える周子の視点で進む。
朝廷と幕府の絆を強固にするために、源頼朝と北条政子の娘である大姫入内が計画される。
女性の視点での鎌倉政治史といったところだろうか。

政治や人間関係が複雑、しかも私があまり好きではない鎌倉時代の政治史なので、読み終えるのにかなり時間がかかってしまった。

物語の中で一番印象に残ったのが、北条政子の「毒親ぶり」である。

子ども(大姫)の気持ちはまったく考えず、自分の考えや価値観を押し付けるのだ。
読んでいて怒りを感じた。
大姫が気鬱になり、悲劇的な結末を迎えてしまうのも当然だ。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」をもう一度視聴してみよう思う。

それにしても、鎌倉時代の政治史は血なまぐさくて陰惨で、なかなかしんどいのである。

第163回 春にお薦め私の1冊

以下は東京新聞(2025年4月12日)の読書欄、「月イチ読書会」に掲載された拙文です。
本当はもう少し長い文章なのですが、紙面の都合で短くなった上で掲載されました。

若い人にはぜひ

『新装版 竜馬がゆく』全8巻
司馬遼太郎著

出会いの春です。
弱虫だった土佐の「坂本竜馬」は、剣術を学ぶことで自信を付け、江戸に出て勝海舟という師やさまざまな人物と出会って刺激を受け、大きく成長していきます。
特に若い世代に読んでほしいです。
(文春文庫・825~880円)

※写真は、私の持っている文庫(1984年9月20日 第25刷)。
高校時代に買って読んだ本です。
まだ消費税はなく、定価460円でした。

第162回 丸山正樹著『夫よ、死んでくれないか』

丸山正樹著『夫よ、死んでくれないか』(双葉社)を読む

すごいタイトルのこの本は、現在、テレ東で放送中のドラマの原作だ。
ジャンルはミステリということになるらしい。

私は、ミステリ小説はあまり読まないのだが、ドラマの原作本ということで読んでみることにした。

三十代半ばになった学生時代の同級生の女性3人(ドラマでは、安達祐実さん、相武紗季さん、磯山さやかさん)は、それぞれに夫に不満を持っている。
そして、ある事件がきっかけで、物語は予想を次々と裏切る展開で進んでいく。

「衝撃のノンストップミステリ」で、あっという間に読み終えてしまった。

ドラマの方は2話まで進んだが、原作とは違う部分もある。
これからドラマで原作との違いを楽しみたいと思う。

第161回 高井宏章著『新聞のススメ』

高井宏章著『新聞のススメ』(星海社新書)を読む。

著者は元日本経済新聞社の編集委員であった高井宏章氏。
高井氏が、20代の若者2人に1か月間新聞を読ませるという内容だ。
そして、1か月後、新聞に対しての考えがどう変化したか、また自分がどう変化したかを観察した本。

若者の1人は東大法学部、大学院でも法律を学んでいた麻雀プロ。
そしてもう1人は現役の東大生。
当然のことながら、この2人には新聞を読む習慣はなかった。

彼らは、新聞を1日15分程度、1か月間気楽に読み続けてみる。
すると、社会や物事の見方が劇的に変化したのだ。
そして、新聞の魅力を知ることになる。

「新聞は陰謀論へのワクチンになる」「デジタルよりも紙のほうが頭に入る」などは本当にそう思う。

『新聞のススメ』、ぜひ多くの若者に、いや、若者だけでなく多くの人に読んでほしいと思った。

第160回 オープン戦観戦記

今更ながらオープン戦観戦記。

3月11日、ベルーナドーム(埼玉県所沢市)でのオープン戦「西武対阪神」を観戦した。
平日のオープン戦ということもあって観客は少なく、とても快適だった。
観客数は9500人だったようだ。

投手戦の締まった試合だった。
7回裏、西武が1点をとった時だけ球場は盛り上がった。
しかし、この時、私はクレープ屋さんの前に並んでいたのだ。
しかも、店員さんに注文を忘れられていて、4~5人に順番を抜かされてしまった。
やっとクレープを手にしたと思ったら、注文したものとは違うもの。
私にはこのようなことが本当に多いのである。

そのようなわけで、得点シーンを見ることができなかった。

西武は5人の投手の継投で、あわやノーヒットノーランでの勝利かと期待した。
けれど、9回に阪神の前川右京選手の内野安打で逃してしまう。
「さすが西口監督、監督になってもそうなのね」と笑ってしまった。

今シーズン初めての生観戦は、1-0で西武の勝利。
「今年のチームは去年と違う」という感想だった。

3月28日から公式戦が始まった。
最初のカードは日ハムに3連敗。
なかなか厳しいスタートだが、シーズンは始まったばかりだ。
諦めずに埼玉西武ライオンズを応援してゆきたいと思う。

第159回 永井紗耶子著『秘仏の扉』

永井紗耶子著『秘仏の扉』(文藝春秋)を読む。

明治新政府は、神道国教化の方針のもと、1868年に神仏分離令を出した。
それまで当たり前であった神仏習合を禁止し、神道と仏教、神社と寺院を明確に切り離したのだ。
これを機に、廃仏運動が激化し、全国の寺院や仏像の破壊が広がってしまう。

このような中、日本の仏教や仏教美術のすばらしさを伝えた男たちがいた。
写真家の小川一眞、官僚の九鬼隆一、法隆寺の千早定朝、東洋美術史家のフェノロサ、思想家の岡倉天心、官僚で後に僧侶となる町田久成である。

この6人の物語が『秘仏の扉』だ。

この小説は6章からなるが、各章で一人の人物を扱っている。
同時期の出来事をそれぞれの視点で描いているところがおもしろかった。

彼らがいなかったら、寺院や仏像などの日本美術は消えてなくなっていたかもしれない。
彼らのやった仕事は非常に偉大だった。

この中には、家庭人として問題ある人物も複数いるのだが。

寺社仏閣好き、仏像好きの私としては、『秘仏の扉』は最高の小説だった。

第158回 大学生が注意すべきこと

以下は下野新聞(2025年3月25日)に掲載された拙文です。

危険に近づかず学生生活満喫を

先日、大学時代の恩師の最終講義があった。すっかりきれいになっていたキャンパスで行われた最終講義には、約100名の教え子が集まった。先生の集大成ともいえる講義を、私はとても懐かしい気持ちで聴講した。懇親会では、恩師や同級生、歳の離れた後輩たちと思い出話で盛り上がった。

大学の4年間は、学ぶにしても、遊ぶにしても、何でも自由にできる時期だ。大学生には学生生活を大いに満喫してほしい。その際、気をつけなければならないことがある。キャンパス内外には、大学生を狙ったカルト宗教やマルチ商法の団体が存在するのだ。また、闇バイトに手を染めてしまうと犯罪者になってしまうのだ。

学生たちには、これらの危険な団体や行動などには近づかず、巻き込まれずに、健全で充実した学生生活を送ってほしいと思う。

合格祝賀会を開催しました

3月18日(火)に、第28回目の合格祝賀会(終了式)を開催しました。

第28期生全員が顔を合わせる最後の日でした。
とても感動的な時間を過ごすことができました。

当日提出してもらったアンケートや合格体験記も感動的な内容でした。

塾通信「Step By Step」の合格特集号は、5月下旬〜6月に発行予定です。
完成しましたら塾生に配付します。

どうぞご期待下さい。

第157回 村山由佳著『PRIZE』

村山由佳著『PRIZE』(文藝春秋)を読む。

売れっ子作家である天羽カインは、全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」は受賞したものの、その他の文学賞とは縁が無い。
中堅作家である彼女は、日本の最高峰である直木賞の候補には何度もあがっていたが、いつも落選する。

自分の作品は選考委員たちの作品よりもずっと売れているのに、なぜ賞をくれないのか?
自分の作品のどこに問題があるのか?
選考委員は自分に嫉妬しているのではないか?
天羽カインは悩み、怒り狂う。

天羽カインは直木賞への執着を隠すことなく、受賞に向けて、編集者の緒沢千紘と二人三脚で作品を作り上げてゆく。

文壇や直木賞、出版社の裏事情などがたくさん描かれていて、読書好きにはたまらない。
作家は己を曝け出すものであるが、「村山さん、ここまでやるか」と思うような作品だった。
そして、意外な結末。

最後まで一気に読んでしまった。
村山由佳は、令和の無頼派作家なのかもしれない。

第156回 今年最初のプロ野球観戦

今年最初のプロ野球観戦のため、埼玉西武ライオンズの本拠地ベルーナドームへ行ってきた。

最近は背番号なしのレプリカユニフォームを着ていたが、今回は思うところあって〈背番号55〉の秋山翔吾選手のもので観戦した。

秋山選手は現在、セ・リーグの広島東洋カープでプレーしている。
秋山選手がカープに移籍してからは〈背番号55〉は封印していた。
こんな日が来るなんて。

「思うところ」は秘密です。

観戦記は後日書きたいと思っています。