第4回  躍動するルーキー 西武・滝澤夏央選手

埼玉西武ライオンズに新星が現れた。
育成ドラフト2位、高卒1年目の18歳、滝澤夏央選手である。
先日、西武のみならず球界を代表する名遊撃手・源田壮亮選手が怪我をしてしまった。そのバックアップとして、急遽5月13日に支配下登録された。それにともない背番号は「126」から「62」と憧れの二桁に。支配下登録されたその日に一軍昇格。「2番・遊撃手」として初出場すると、なんと、プロ初安打、プロ初得点を記録。そして、その日のお立ち台にまで立ってしまうという大活躍。
身長164cm、小さな体で元気いっぱいに躍動する姿に、ライオンズファンはすっかり魅了されてしまった。お立ち台での初々しい受け答えも二重丸だった。

昨日、そんな滝澤選手を楽しみにして、ライオンズの本拠地、私にとっての聖地ベルーナドームへ足を運んだ。
コロナ禍以前、2019年まではチケットを入手するのが難しかったが、コロナ禍が続く今では特別な日(レプリカユニホーム配付日など)を除いて、当日でも簡単にチケットを手に入れることができるようになった。以前は、土日祝日は「ほぼ満員」が当たり前だったが、今はエリアによってはスカスカである。観客としてはありがたいのだけれど、球団の経営を考えると複雑な気持ちである。

対戦相手は東北楽天ゴールデンイーグルス。
我がライオンズは、6回まで「1-3」で負けていた。流れとしては、このまま負けてしまうのではないかという試合展開。
まあ、「おかわり君」ことベテランの中村剛也選手のホームラン(今季4号、通算446号)を生で見ることができたので「今日は良しとするか」と、一緒に観戦した次男(大学1年生)と話していた。
ちなみに、中村選手は5月13日に445号を放ち、あの長嶋茂雄さんの本塁打数を抜いて歴代単独14位に躍り出た。これは本当にすごい数字だ。
中村選手のホームランは、バットを軽く振ったように見えて、きれいなアーチを描いてスタンドに入る。滞空時間の長い美しいホームランだ。現在のライオンズの4番、ホームランバッターの山川穂高選手は、思い切り振り抜いて、ズドンとスタンドに入るホームラン。同じホームランバッターでも全然違う印象だ。もちろん、どちらも見ていてわくわくする、すばらしい打者である。

7回裏、ライオンズの攻撃。川越誠司選手のレフトへのタイムリーヒットでスコアは「西2-4楽」となる。ライオンズのチャンスは続く。
球場にはライオンズのチャンステーマ4が鳴り響く。コロナ禍でなければ、球場全体に地響きのようなファンの声援が響き渡ったはずだ。今は大きな拍手で応援である。

2アウトランナー1・3塁で、昨日のラッキーボーイである滝澤選手が登場曲とともに打席に向かう。登場曲は、なにわ男子の「夢わたし」。
コロナ禍以前であれば、「ナツオ! ナツオ!」と大声援が響くところ。
楽天のピッチャーは勝ちパターンの中継ぎ・安樂智大投手。0-1からの3球目、滝澤選手がセンターへのタイムリースリーベースを放ち「4-4」の同点となる。球場のファンは大喜びである。私も、つい拳を突き上げ、喜びの声を出してしまった。
ここまででも驚きなのに、このあとがさらにすごい。
次の打者・外崎修汰選手に対して、安樂投手が暴投をすると、滝澤選手はそのすきを突いて好走塁。ホームにかえって、西武は「5-4」と逆転に成功する。

その後、ライオンズは勝ちパターンの必勝リレー。
8回表は平良海馬投手、9回は5月1日に通算150セーブをあげた増田達至投手。
結局、「5-4」でライオンズが勝利し、ライオンズファンにとっては最高の試合となった。
そして、なんと、この日のお立ち台に上がったのはルーキー滝澤選手である。
ルーキーの2日連続のヒーローインタビュー。西武ファンは、滝澤選手の初々しく、元気いっぱいのプレーにすっかり魅せられてしまった。
先輩の選手たちからも、「ナツオ、ナツオ」と言われて可愛がられているようである。

これからも、躍動するルーキー・滝澤夏央選手に注目してゆきたいと思う。
滝澤選手の大活躍を生で見ることができて本当に良かった。これだから生観戦はやめられない。
マスクを外し、以前のようにファンが一体となって声を出して応援できるようになれば、さらに言うことなしである。

第3回 新生活、慣れてないのが当たり前

先日、当塾のホームページをリニューアルし、ブログ「塾長の気まぐれ日記」を始めたことを、塾生と保護者の皆様、卒業生たちにLINEで報告しました。

すると、たくさんの方々が近況やブログの感想などを送ってくれました。
「塾長の気まぐれ日記、おもしろかったです」「これからも楽しみにしています」「時々のぞきにきます」などとうれしいことを書いてくれた卒業生もいました。感謝、感謝です。

これからも「ゆる~く」書いてゆきたいと思います。暇な時にお読み下さい。
忙しい中、感想を送っていただいき、本当にありがとうございました!


さて、高校1年生になったばかりの卒業生(第25期生)の中には、「学校生活にはまだ慣れていないけれど、なんとか頑張っています」というようなことを書いてくれた人が何人かいました。

そうです。まだ5月です。新生活に慣れていなくて当然です。
高校に入学し、新学期がスタートし、新しい環境に慣れるのに必死だったと思います。怒涛の1か月だったことでしょう。高校入学は喜ばしいことですが、生活ががらりと変わり、緊張した毎日を送ることになるので、知らず知らずのうちにストレスがたまっているものです。

1学期中は、まず、高校生活に慣れることを第一に考え、くれぐれも無理をし過ぎないようにして下さい。
また、失敗することは悪いことではありません。いろいろなことにチャレンジし、小さな失敗をたくさんして、少しずつ成長して下さい。応援しています!

現在、塾通信「Step By Step」の合格特集号を作成中です。
6月中には第25期生のみなさんのもとへ、合格祝賀会時に撮影した集合写真と一緒に届けたいと思います。しばらくお待ち下さい。

一日一日、楽しく過ごしてゆきましょう!


最後に、私の好きなこの季節の俳句です。

摩天楼より新緑がパセリほど  鷹羽狩行

第2回 生観戦の楽しみを書こうと思ったのですが

野球観戦が趣味です。
とくに球場に行き、生で試合を見るのが好きです。

私の家から宇都宮清原球場までは、車で30分ちょっとで行けます。そんなわけで、高校野球は主に宇都宮清原球場で観戦しています。

現在、高校野球の春季大会中です。

今大会は、卒業生が主力で活躍している茂木高(対栃木工業高、4月23日)と真岡工業高(対青藍泰斗高、4月29日)の試合に行きました。

残念ながら、どちらも負けてしまいましたが、卒業生たちの一生懸命に頑張る姿を見て、たくさんの元気をもらいました。

そして今日、準決勝の二試合、「栃木工業高-作新学院高」(第一試合)、「佐野日大高-青藍泰斗高」(第二試合)の試合を見に行きました。
ゴールデンウィーク中の準決勝ということもあって、観客は多く、キャノンの宇都宮工場が臨時駐車場になっていました。
臨時駐車場から球場に向かう間、新緑がとても美しく、頬を撫でる風が気持ちよかったです。

今日は三塁側の内野席で見ていました。
第二試合(佐野日大高-青藍泰斗高)が始まって少しすると、なんと、私の席の5、6メー離れた右下の席に、作新学院の名将、小針監督が座っているではありませんか。

小針崇宏監督、23歳で母校の作新学院高の監督に就任。
就任3年目で低迷していた作新学院を甲子園に導く。
現在38歳、これまで甲子園に春夏通算13回出場、17勝11敗、勝率.607 、優勝1回。

あの小針監督です。
びっくりしました。
ついさっきまで、ダッグアウトで指揮を取っていた小針監督です。
明日の決勝戦に向けて、どちらと対戦するか偵察していたのでしょう。
正直、どきどきして、試合に集中できなくなってしまいました。

カバンにマネージャー手作りと思われる「鍛錬」と刺繍されたボール型のお守り(?)がつけられていて、それがとても印象的でした。
保護者や卒業生のような人たちが次々とやってきて挨拶していました。私も小針監督のところに行って、ご挨拶したいと思ってしまいました。
6回終了後(この時点で6-1で佐野日大が勝っていました)に席を立ち、お帰りになりました。
私は「明日の試合もがんばって下さい!」と心の中でつぶやきました。
結局、試合は9―1、7回コールドで佐野日大の大勝。

明日の決勝は「佐野日大高-作新学院高」です。

今回は生観戦の楽しみを書こうと思ったのですが、調子が狂ってしまいました。
生観戦の楽しみについては、いつか書きたいと思います。
まあ、こんなことがあるのも生観戦の楽しみなのかもしれません。

第1回 「塾長の気まぐれ日記」を始めます

この度、当塾のホームページをリニューアルしました。

ここ数年、「リニューアルしなければ、リニューアルしなければ」という謎のプレッシャーを感じつつ、勉強嫌いな子どもにとっての夏休みの宿題のように、先延ばし、先延ばしになっていました。

いろいろと事情があって、ホームページをリニューアルしなければならない状況になり、さすがにお尻に火がつきました。

というわけで、今年のゴールデンウィーク中にリニューアルの準備に取り掛かり、進めてきました。

長年パソコン関係でたくさん助けてもらっている友人のSさん、そして今年大学院を卒業して社会人になったばかりの長男の力を借りて、この度、なんとかリニューアルできたという次第です。

この二人には本当に感謝しています。
デジタル弱者の私にとって、この二人はスーパーマン、いえ神様です。
本当にありがとうございます。

さて、これを機に「塾長の気まぐれ日記」を始めます。

「気まぐれ」ですので、「毎日」とか「週に1回」とか、はっきりしたことは言えません。
自分の首を締めないように「気まぐれ」に投稿してゆきます。
何卒、よろしくお願い申し上げます。

子どもの成長を信じて待つ

「子どもの成長を信じて待つ」ことは、簡単なようで意外と難しいものです。

テストの結果を見て怒り過ぎてしまったり、他の子と比較して不足している点が気になり、そのことを本人に言ってしまったり。しかし、親が子どもの目先の結果ばかり見て、あれこれと言い過ぎていると、子どもの自主性、やる気が失われてしまい、少しも良いことはありません。幼少期から親にあれこれと干渉され過ぎて育てられた結果、自分では何も考えない、無気力な子どもになってしまう場合もあります。

子どもたちには、努力していても結果が出ない時期があります。保護者の皆様には、是非、その努力にも目を向けていただきたいと思います。そして、結果が出ない時期も、子どもの成長を信じて待ってほしいのです。親に信じてもらっている子どもは、安心して事に当たり、失敗も成功もしっかりと経験して、非常に力強く育ってゆきます。このような塾生、卒業生をたくさん見てきました。もちろん、努力せず、特別な理由もないのに怠けてばかりいることは見逃さず、ちゃんと叱ることも大切です。ただし、心の問題(悩み)を抱えている場合もあるので注意が必要です。

是非、子どもの成長を信じて待ってあげて下さい。

※「自主性を尊重する」と「放任」は違います。このことは次の機会に書きたいと思います。

最後はメンタルの強さ

 県立高の一般選抜まで、あと42日となりました。
 あと42日しかないと思うか、あと42日もあると思うか、状況は同じであっても気持ちがまったく違ってきます。
 学生時代から含めると、私は塾講師という仕事を始めてもうすぐ32年目に入ります。そして、尚朋スクールは今春で26年目になります。この間、たくさんの受験生と接してきました。そして断言できることがあります。「最後はメンタルの強さだ」と。
 受験を前にして、不安で不安で勉強に集中できなくなってしまう人がいます。何をやっていても落ち着かず、空回りしてしまっている人です。それは受験生としてよくある状態です。しかしその一方で、次第に集中力を高め、黙々と自分の課題に取り組み、充実した直前期を過ごす人がいます。
 この二者は何が違うのでしょうか。
 それは心のあり方です。「合格しなくては」という思いが強すぎて、力みすぎてしまっている人は、直前期に勉強に集中できないのです。また、受験本番で、自分の実力以上の力を出そうとする人は、逆に緊張して力が出せなくなってしまうのです。そうではなく、これまでがんばってきた自分を信じて直前期を過ごし、また本番では「自分の力を全部出し切ってやるぞ」、「受験を楽しんでやるぞ」といった気持ちで臨むと良い結果が得られるものなのです。リラックスして試験に臨む、心の余裕が大切ですね。そして究極のところ、本番で自分の持っている力を出し切れれば、どのような結果になろうが、それは良い受験だと私は思うのです。

 結果はコントロールできないが、準備はできる。できる準備をすべて終われば、準備にふさわしい結果がやってくる。

 元メジャーリーガーのイチロー選手の言葉です。
 「本番で力が出せるだろうか」「志望校に合格するだろうか」などと悩んでいないで、今できる準備をしっかりとやって下さい。そして、「受験を楽しむ!」くらいの気持ちで本番に臨みましょう。そうすれば、必要以上に緊張しすぎることもなく本番に臨めます。
 受験は、最後はメンタルの強さがものをいいます。そしてそれは心の持ちようなのです。
 中3生が、本番で最高のパフォーマンスを発揮できることを願っています。

『Step By Step 2・3月合併号 第304号』(2022年1月24日発行)より

受験はドラマだ

 各私立高校の合格発表がありました。当塾の塾生は、全員が私立高校に合格しました。また、小山高専の推薦入試を受験した塾生も無事合格しました。中学3年生のみなさん、合格、おめでとうございます。

 ほっと一息ですね。しかし、ここで気を抜いてはいけませんよ。

 先日、ある中3生が、次のようなことを言ってきました。

 「この間のテスト、すごく良かったです。自分でも力がついてきたと実感しています。入塾のとき、先生に、これからしっかりと勉強していけば、時間はかかるけど必ず伸びると言われました。それは、本当だったんですね」

 この塾生は、目を輝かせ、とてもうれしそうでした。

 この言葉を聞いて、私は本当に良かったなと思いました。

 中学3年生は、思春期真っ只中です。この時期に自分の進路を決定します。そして、志望校に向けて、一生懸命に勉強しなければなりません。それは、辛く、苦しいことです。成績が伸びずに焦りを感じたり、成績を伸ばしている友達に嫉妬したり、成績が上がったといっては喜んだり、下がったといっては傷ついて打ちのめされたり。受験生の感情は、振幅が激しいものです。私の大好きな歌人、石川啄木の歌のようです。しかし、仲間と競い合い、励まし合いながら、それぞれの目標に向かってがんばることは、とてもすばらしいことです。真剣に授業を受けているみなさん、自習室で黙々と鉛筆を走らせているみなさん、使い込んだ問題集を持って質問にくるみなさん、面接の練習で緊張した表情のみなさんを見ていると、「みんな、輝いているな」と思い、感動します。

 今は辛く、苦しい受験勉強です。しかし、いつか懐かしく感じる時がくるものです。そのときの感情は、「やり切った」という満足感かもしれません。「もうちょっと頑張れたかな」という、ほろ苦い思いかもしれません。いずれにせよ、一生懸命にがんばった人だけに残る「大切な思い出」です。それは、みなさんの自信になり、宝となるはずです。つくづく、「受験はドラマだ」と思います。

  こころよく 我にはたらく仕事あれ それを仕遂げて死なむと思ふ  石川啄木 

  「仕事」を「受験勉強」に置きかえて、このくらいの気持ちで受験に臨んで下さい。あくまでも、気持ちですよ。

 県立高校の入試まで、40日を切りました。

さあ、気を引き締めて、ギアを上げてがんばりましょう!

『Step By Step 2月号 第261号』(2019年1月28日発行)より

受験勉強を通して成長する

 もうすぐ立春、暦の上では春になります。
 春といえば、平安初期の歌人・在原業平の次の和歌を思い出します。

  世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

 現代語訳: この世に、もし全く桜というものがなかったならば、咲くのを待ちこがれたり、 散るのを惜しんだりしなくてすみ、のんびりとした気持ちで過ごせるだろうに。

  在原業平は、桜のすばらしさをこのように詠みました。

 ところで、この世に、「もし受験というものがなかったら」、どうなのでしょうか?
 「受験勉強なんて意味がない。子どもの頃に勉強したことなんて、どうせ忘れてしまうのだから」、このようなことを言う大人もいます。
 でも、本当にそうでしょうか?
 確かに、子どもの頃に勉強した内容を、大人になってもすべて覚えているという人はあまりいないと思います。勉強した内容は、大人になってからの仕事には直接関係ない場合が多いでしょう。この点だけを考えれば、受験勉強に意味はないと思えるかもしれません。
 しかし、受験勉強を通して身につく力は学力だけはないのです。他にもたくさんあるのです。
 たとえば、目標を定め、計画を立て、それを遂行していくことで実行力が身につきます。辞書や参考書を開き、自分の力で問題を解決する、解決しようとすることで、問題解決力が身につきます。また、苦しみながらも試験日までに出題範囲を終わらせるということを通して、締め切りを守るという習慣も身につきます。
 これらは、社会に出て、仕事をしていく上で、たいへん重要な能力です。
 さらに、中学校までに学ぶ内容が身についていれば、ちょっとした教養人といえるかもしれませんね。たとえば、世界情勢を知ろうとする場合、国や国家間の歴史を知っていなければ、正確に理解することはできないものなのです。

 私は、受験という「人生のハードル」に対して、まじめに向き合ったとき、人は大きく成長できると考えています。もちろん、入学試験には定員があるので、思った通りの結果にならない場合もあるでしょう。しかし、人生という視点に立てば、その悔しい思いさえも成長の糧になるのです。
 このように考えれば、受験を通して身につく力は計り知れないと思いませんか?
 塾生のみなさんには、受験を通して大きく成長して欲しいと願っています。

 さて、県立高全日制の一般選抜入試まで、あと1か月ほどとなりました。
 当塾の中学3年生は、この一年間、一人ひとりが大きく成長していると感じています。
授業のない日も自習室に来て、毎日黙々と勉強している塾生がいます。問題集に付箋を貼り、教材をぼろぼろになるまで使い込んでいる塾生がいます。添削を希望して、週に何枚も作文を書いてくる塾生がいます。昨日実施した模試では、休み時間に教材を開いたり、仲間と内容を確認し合ったりと、最後まで気持ちを切らさずにがんばっていました。
 引き締まった、いい顔つきになった中学3年生をみて、頼もしく感じています。そして、同じ志を持った仲間と、励まし合いながらがんばったという記憶は、一生の宝となるはずです。その思い出の一部に、尚朋スクールが残っていたら、これほどうれしいことはありません。
 「サクラサク」春は、もうすぐです。あと1か月、がんばれ受験生!

『Step By Step 2月号 第233号』(2017年1月30日発行)より

『徒然草』の魅力

 古文を読むのは非常に楽しいものです。
 最近、私は就寝前に古文を読んでいます。
 『今昔物語集』、『伊勢物語』、『土佐日記』、『大鏡』、『方丈記』、『平家物語』、『南総里見八犬伝』などなど、時代とジャンルを問わず、その日の気分によって、好き勝手に読んでいます。
 「古文」は「勉強」というイメージがあって「嫌いだ」という人もいるかもしれません。また、「21世紀に、どうして古くさいものを読む必要があるのか」と思う人もいるでしょう。
 しかし、実際に古文を読んでみると、はるか昔の日本人の心情も、現代を生きる私たちと何ら変わることはないということが分かります。
 みなさんには、まずは現代語訳でいいので、古文に親しんで欲しいと思います。
 数ある古文の中でも特におすすめなのが、兼好法師(1283?~1352?)の『徒然草』です。鎌倉・南北朝時代の歌人・文人であった兼好法師の書いた『徒然草』は、243の短い章段から成る随筆集です。内容は、人生観、自然観、趣味など、多岐にわたっています。
 私は高校時代に『徒然草』に魅了され、それ以来、ずっと愛読しています。
 『徒然草』は人生指南の書でもあります。これを読んでいれば、人の道を踏み外さなくてすむのではないかと思います。
 どのような章段があるのか、いくつか例を挙げてみましょう。
 ※以下の章段名と現代語訳は、『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 徒然草』(角川ソフィア文庫)のものです。

「友あれど心の友はなし」(12段)、「思い出は心をうるおす」(29段)、「悪筆は個性の表現」(35段)、「ばかを嘲る大ばかもの」(41段)、「会話のマナー」(56段)、「人生はこの一瞬の積み重ね」(108段)、「勝つと思うな、負けぬと思え」(110段)、 「良友と悪友の条件」(117段)、「訪問のマナー」(170段)、「社交の極意」(233段)……。

 どうでしょうか、上記の章段名を見ただけでも、興味深いと思いませんか。
次の第13段「読書は古人との対話」は、わずか3文の非常に短いものです。その最初の一文を紹介しましょう。

 独りともし火のもとに文を広げて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。
(独り灯火のもとで読書して、作者や登場人物など、知らない昔の人を友とするのは、何よりも心が安らぐ。)

 現実の人間関係に不満を持っている人も、読書を通して、古今東西の作者や登場人物と時間を共有すれば、「少しも寂しくはないぞ、幸せな気分になるぞ」という内容で、兼好は読書のすばらしさを述べています。
 ちなみに、尚朋スクールの塾名は、「古代の賢人を友にする」という「尚友」に由来します。
 塾生のみなさん、是非、「徒然草」を読んでみて下さい!

『Step By Step 2月号 第208号』(2015年2月2日発行)より