第41回  島田雅彦著『パンとサーカス』(講談社)

島田雅彦著『パンとサーカス』(講談社)は、ハードカバーで557ページの大著だ。
2020年7月31日から2021年8月29日に、北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞に連載されたものを、加筆、修正した上で2022年3月に出版された。
この本を、飽きることなく一気に読んだ。

帯の裏側には以下の4氏による推薦文が書かれている。

前川喜平氏(元文部・文科官僚)
日米同盟という名の永続占領から自由日本を解放する革命戦士たちの叙事詩

鴻巣友季子(翻訳家、エッセイスト)
スケールの大きな謀略小説であり、極辛の政治風刺劇であり、極太のエンターテイメントである

立川談四楼(落語家、作家)
私たちが夢想する革命に立ち上がる主人公に快哉を叫んだ!

永江朗(著述家)
パンとサーカスさえ与えておけば国民はおとなしくしているなんて思っているヤツらに一泡吹かせたい

腐りきった日本の政治、そんな政治を終わらせるべく、二人の主人公が立ち上がり、彼らを支える仲間たちが立ち上がる。
読み進めていくと、この政治家のモデルは元首相のあの人物だなとか、この元右翼で大物のィクサーはあの人物だなとか、なんとなく分かってくる。
その点もおもしろかった。
政治の裏側、日米関係の裏側なども書かれていて、エンターテイメントでありながら、政治の勉強にもなる。

この小説のすごいところは、安倍元首相の銃撃事件前に書き始められたということ。
鋭い作家が書いたフィクションが時間をおいて現実になるということは良くあることだ。この作品もそのような印象を受ける。
いつか映画化されるのではないかと思う。

安倍元首相の銃撃事件以降、日本の政治の闇が次々と暴かれている。
そして、国民不在の日本の政治が、これほど劣化していたという現実をつきつけられている。腐りきった日本の政治は、この物語のようにまともな方向に進むのだろうか。
島田雅彦さんのメッセージをキャッチしつつ、是非、多くの人に読んで欲しいと思う一冊である。

入試直前の特別授業(社会)

尚朋スクールでは、一般選抜受験者を対象に「入試直前対策」を行います。
3月4日(土)の今日は、午後1時半から、毎年恒例の「社会の特別授業」を行いました。

入試直前の土曜日にやることは、私(塾長)が「これだけは確認しておいて欲しい」という願いを込めた社会の授業です。
一般選抜受験組の塾生は、私が作成したオリジナルプリントを、教科書(地理・歴史・公民)や地図帳などを利用しつつ、全員で読み合わせをしてゆきます。

今年のプリントはB4で7枚。毎年この中からたくさんの問題が出題されます。
単なる用語の確認だけでなく、頻出の記述問題も確認します。
普段の授業でも意識しているのですが、社会科が単なる「受験の1教科」ではなく、現代社会と深く関係していること、「社会科は生きてゆく上で重要なものである」ということを塾生たちに意識させるようにしています。

当塾では、社会科に限らず、すべての教科でもこのような姿勢で指導にあたっています。
この点が当塾の強みであると考えています。

当初の予定では、午後1時半~3時半の予定でしたが、授業に熱が入り、20分の休憩時間(当塾からおやつを差し入れています)をはさんで午後4時20分までかかってしまいました。

その後、午後5時30分まで希望者は自習をしていきました。
この間、面接が必要な塾生を対象に面接の練習を行いました。

明日は、参加は自由。
午後1時半から5時半まで自習室を開放し、塾生たちの質問に答えてゆきます。

入試まであとわずかとなりましたが、塾生たちには「やるだけのことはやった!」という手応えを持って本番に臨んで欲しいと思います。

第40回 「二・二六事件」の日に

今日は「二・二六事件」の日だ。
東京新聞の朝刊「今日は何の日」に以下のように書かれていた。

陸軍皇道派青年将校によるクーデター事件。1936年2月26日の早朝、約1500人の兵士を率いて首相官邸などを襲撃。永田町、三宅坂一帯を占拠しました。

テレビで特集番組をやっていないかと新聞のテレビ覧を見たら、NHKBS1で特番の再放送をやっていた。
しかし、気づくのが遅く、見逃してしまう。
そのため、本棚から引っ張り出して、以下の3冊の該当部分を読むことにした。

  • 半藤一利著『昭和史』(平凡社)
    「第四章 軍国主義への道はかく整備されていく ~陸軍の派閥争い、天皇機関説~」
    「第五章 二・二六事件の眼目は『宮城占拠計画』にあった ~大股で戦争体制へ~」
  • 若槻禮次郎著『明治・大正・昭和政界秘史 古風庵回顧録』(講談社学術文庫)
    「第三章 政党時代 第十三節 砲車を牽く骸骨 斎藤内閣 暗殺また暗殺 軍備拡張に反対す」
  • 永井荷風著 磯田光一編『摘禄 断腸亭日乗 上巻』(岩波文庫)
    「昭和十一(一九三六)年 二月二六日、二月二七日」

二・二六事件は、陸軍の派閥争い(統制派と皇道派)が発端の軍事クーデターだ。
このクーデターは失敗に終わったが、斎藤実内大臣、高橋是清蔵相、渡辺錠太郎陸軍教育総監らが殺害され、岡田啓介首相と鈴木貫太郎侍従長が重傷を負った。
二・二六事件以後、軍部の発言が強化されるようになってゆく。

『明治・大正・昭和政界秘史 古風庵回顧録』は、私の学生時代の授業のテキストだった。
若槻禮次郎(1866~1949)は戦前に2回首相を務める。
今回再読した部分で、若槻は自分が所属する民政党の意見交換会で以下のように演説したと回想している。

(前略)国防の充実は財政との調和を計って行わなければならん。財政との調和を無視し、国民の負担を顧みないで軍備を拡張すれば、大砲は出来るだろうが、その大砲を牽く者は骸骨であることになる。

P348

さらに、民政党での演説会で以下のように発言したと述べている。

元来今日は、日本より進んで戦争をしかけなければ、いずれの国からも、日本は攻撃されることはないのである。故に国民は、断じてかかる詭弁(引用者注、軍備を充実しておかなければ、国家は不測の禍いを被ることになるという軍部の主張)に惑わされてはならない、と演説した。

P349

残念ながら、若槻の主張も虚しく、日本は戦争に突き進んで行ってしまう。
しかし今こそ、私たちは若槻の言葉に耳を傾けるべきではないだろうか。

二・二六事件から87年目の今日、そんなことを思った。

特色選抜、全員合格内定しました!

当塾の現中3生(第26期生)は5人が県立高校の特色選抜を受験し、全員が合格内定しました。
合格が内定したみなさん、おめでとうございます!

・真岡高 1名
・茂木高 4名

一般選抜まであと約半月です。
私たち講師も、一般選抜受験生とともに最後までがんばってゆきます。

第39回 Sさんの雪の句

昨日の午前中は雪景色だった。
「このまま降り続けると授業ができなくなるかも」と心配したが、雪は途中から雨に変わり、特に問題なく授業を行うことができてほっとした。

大人になると、雪が降るとうんざりする。
私の場合でいえば、「授業ができなくなるかも」「駐車場の雪掻きをしなければ」とか、「余計な仕事が増えて困るな」などと思ってしまうのだ。
純粋に雪を楽しめなくなっていることを残念に思う。

以下は、雪が降ると必ず思い出す句だ。

ゑみもしてあるくや雪の一日目

この句は、私の大学の先輩であるSさんの句である。
Sさんが当時所属していた俳句結社誌Kに掲載されたものだ(2001年4月号)。

そして、その結社の代表に取り上げられ、鑑賞もされていた。
この句、「笑み」と書かずに「ゑみ」と、そして「歩く」と書かずに「あるく」とひらがなで表記されている。
ここに雪の柔らかさ、ふわふわとした感じが出ていて、とてもいいなと思う。

Sさんは、大学時代から俳句を作り、学生にもかかわらず、東京にあったAという中規模の結社(会員・同人あわせて500人くらい)の同人だった。
若く、実力もあったため、結社の主宰からも可愛がられていたようだ。
しかし、主宰の急逝により結社Aは3つか4つに分裂した。
Sさんはこのどれにも属さず、まったく関係のない小さな結社K(神奈川県)に入った。
私は30歳前後の頃に俳句に興味を持ち、初学の初学のその時期にSさんから俳句の手ほどきを受けた。
その後、いろいろあって関係が切れてしまったのだが、それでもこの句をはじめとしたSさんの句は今でも大好きだ。

Sさんは当時の仲間(私の先輩)だった人たちとも関係が切れ、体調を崩し、長年住んでいた東京を去り、日本海側にある雪深い故郷に戻って行った。
その後、Sさんがどうしているかは誰も知らない。

Sさん、雪深い故郷で冬には雪の句を詠んでいるのだろうか。

中3生 三者面談会について

お忙しい中、三者面談会(第3回目)にご参加いただきましてありがとうございました。

いよいよ追い込みの時期です。ご相談などがありましたらいつでも面談を行います。また、お電話、LINEでも対応いたします。

何かございましたら、ご連絡・ご相談下さい。

第38回 池波正太郎 生誕100年

時代小説家の池波正太郎さん(1923~90年)が誕生して、今年の1月で100年を迎えた。
東京新聞では、1月30日と31日の紙面で特集を組んでいた。
30日の記事では、作家の今村翔吾さんが池波さんに対する熱い思いを述べていた。

池波作品を愛する作家さんは多い。
とくに、歴史小説や時代小説を書く方たちは、池波さんから大きな影響を受けているようだ。

私は、池波作品のほんの一部しか読んでいないのだが、登場人物たちは人情味があって、立ち居振る舞いがスマートで、とても魅力的という印象がある。
彼らは人間や社会の表も裏も分かっていて、それでいて情に厚く、正義感が強くて、こんな人が職場の上司だったり自分の師匠だったりしたら幸せだなと思う。

新聞の記事を読んで、久しぶりに池波作品を読もうと思い、『剣客商売』の第一巻を読み返している。
60歳の剣術家・秋山小兵衛、やっぱりカッコいい。
というわけで、最近は寝床で『剣客商売』を読んでいる。

根深汁すすり池波正太郎

この句は、昔(15、6年くらい前、もっと前かも?)に作ったもの。
自分でも気に入っている句です。