第191回 宮城喜久子著『新版 ひめゆりの少女』

宮城喜久子著『新版 ひめゆりの少女  十六歳の戦場』(高文研)を読む。

作者は、沖縄県立第一高等女学校4年生の時に、南風原陸軍病院に動員された。
この本は、それから約3か月間の地獄の記録である。

死がすぐ隣にある極限状態の日々、思い出すだけでも辛かったはずだ。
しかし、戦地で亡くなった友人たちのために、戦場の地獄を後世に伝えるために、この本を書いた。
現代に生きる私たちは、その思いをしっかりと受け止めて、次の世代に伝えていかなければならないと思う。

今日は80年目の「終戦の日」だ。
あの戦争でお亡くなりになった方々を追悼しつつ、戦争や平和について考えたいと思う。

第190回 特別企画展「とちぎ戦後80年」

8月9日の長崎原爆の日に、栃木県立博物館で開催中の特別企画展「とちぎ戦後80年~いま、おやと子で知る 軍隊・戦争と栃木」を見てきた。

得ること、学ぶことの多い企画展だった。

歴史修正主義的な発言をする政治家や人々が増えている。
戦争経験者が少なくなっている今こそ、多くの人に見てほしい企画展だ。
どんなことがあっても、絶対に戦争はしてはならないと思うはずだ。

この企画展は8月31日まで開催されています。
ぜひ、親子でご覧ください。

第189回 保阪正康著『軍国主義という病がひそむ国』

保阪正康著『軍国主義という病がひそむ国』(東京新聞)を読む。

この本は、東京新聞が2021年から24年の毎年8月に主催したオンライン講演会がもとになっているそうだ。
講演会がもとになっているだけに読みやすく、知ること、学ぶことが多い一冊だった。

今回の参院選では、「核武装が安上がり」とか「核兵器を保有すべきだ」などという政党が躍進した。
今の日本の政治を見ていると、とても危険だと思う。

今年は戦後80年。
戦争経験者が少なくなった今こそ、「平和国家日本」の進むべき道を真剣に考えるべきだと思う。

今日は「原爆忌」「広島忌」である。

水飲みて鳩と目の合う原爆忌  鈴木三光子

第188回 西村京太郎著『戦争とミステリー作家』

西村京太郎著『戦争とミステリー作家』(徳間書店)を読む。
西村京太郎さんは売れっ子のミステリー作家だった。

タイトルと副題の「なぜ私は『東條英機の後輩』になったのか」に興味を持ったので読んでみた。

この本の構成は六章と特別編からなるが、第一章から第四章までが戦中と戦後の混乱期についての記述。
第五章が小説家になるまでのこと、第六章が京都論、特別編が盟友の作家・山村美紗さんについて。

私はミステリー小説は読まないので、西村さんの小説は読んだことはない。
ただ、西村さん原作の小説がドラマ化されて、頻繁に放送されていたことは知っていた。

私にとっての西村さんは、中学生時代に購入した本、『四季日本の旅9 京都』(集英社)の中の随筆「京の女」である。
この随筆はわずか3ページの文章だが、東京出身の西村さんが京都に住み始めて感じた京都や京都人の怖さについて書かれていて、大きな影響を受けた。
『戦争とミステリー作家』には、この内容がより詳しく書かれていて興味深かった。

西村京太郎さんと山村美紗さんの関係は本当に不思議だ。
この二人の関係について書かれた本があるようなので、いつか読んでみたいと思う。

第187回 『池上彰の世界の見方 朝鮮半島』

『池上彰の世界の見方 朝鮮半島』(小学館)を読む。

先日、録画していたNHKの「映像の世紀バタフライエフェクト」、「激動 アジアの隣人たち 韓国 戒厳令との闘い」を見て、韓国の現代史に興味を持った。

そこで、1980年の光州事件を扱った韓国映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2017年公開)を見た。
その後、手にした本が『池上彰の世界の見方 朝鮮半島』である。

戦後の韓国は、独裁者の大統領が続き、国民は命を懸けて闘った。
韓国の現代史は血塗られた歴史である。

『池上彰の世界の見方 朝鮮半島』は、入門書としては最適の本である。
朝鮮半島の現代史をもっと深く知りたいと思っている。

第186回 「男はつらいよ」 若い人ぜひ見て

以下は下野新聞(2025年7月21日)に掲載された拙文です。

「男はつらいよ」 若い人ぜひ見て

先日の本紙に、映画監督の山田洋次さんの記事があり、強く共感した。私は「男はつらいよ」のファンで、年に数本は必ず見ている。この映画のストーリー構成はシンプルだ。フーテンの寅さんが旅先で恋に落ち、故郷の葛飾柴又や旅先で騒動を起こし、最後は失恋し、また旅に出るというもの。寅さんの含蓄あるセリフ、家族との酒宴、タコ社長とのけんかなど、楽しいシーンがたくさんある。

毎回お決まりの展開なのに何度見ても飽きない。見終わった後はいつも温かい気持ちになれる。それは、登場人物たちがけんかはしても常に相手を思いやる気持ちがあるからだろう。

作品には濃密な人間関係が存在している。時代は変わっても、人間の本質的な部分は変わらないはずだ。ぜひ若い人たちにもこの名作シリーズを見て、何かを感じてほしいと思う。

第185回 デジタル教育 見直しを

以下は東京新聞(2025年7月3日)に掲載された拙文です。

デジタル教育 見直しを

6月18日「考える広場」の「デジタル教育のひずみは?」を読み、教育学者の児美川孝一郎氏の意見に共感した。小中学生対象の学習塾を約30年間やっているが、昔の子どもたちと比べて、読解力や思考力、集中力や忍耐力の低下を感じる。

特に、コロナ禍後に大きく変化したと思う。理由はいろいろあるだろうが、交流サイト(SNS)の利用時間の増加、学校でのデジタル教育の比重の高まりなどが大きな理由ではないか。

成長過程にある子どもにとって、紙の本を読む、紙の辞書で調べる、鉛筆を使って文字を書くことはとても大切だ。私は、保護者や子どもたちに「デジタル教育のマイナス面」を折に触れて伝えている。国は、効率優先の姿勢を改め、GIGAスクール構想を早急に見直すべきである。

デジタル教育 見直しを

以下は東京新聞(2025年7月3日)に掲載された拙文です。

デジタル教育 見直しを

6月18日「考える広場」の「デジタル教育のひずみは?」を読み、教育学者の児美川孝一郎氏の意見に共感した。小中学生対象の学習塾を約30年間やっているが、昔の子どもたちと比べて、読解力や思考力、集中力や忍耐力の低下を感じる。

特に、コロナ禍後に大きく変化したと思う。理由はいろいろあるだろうが、交流サイト(SNS)の利用時間の増加、学校でのデジタル教育の比重の高まりなどが大きな理由ではないか。

成長過程にある子どもにとって、紙の本を読む、紙の辞書で調べる、鉛筆を使って文字を書くことはとても大切だ。私は、保護者や子どもたちに「デジタル教育のマイナス面」を折に触れて伝えている。国は、効率優先の姿勢を改め、GIGAスクール構想を早急に見直すべきである。

第184回 夏のいま、読んでみたい1冊

以下は東京新聞(2025年7月12日)の読書欄、「月イチ読書会」に掲載された拙文です。

本当はもう少し長い文章なのですが、紙面の都合で短くなった上で掲載されました。

『スローカーブを、もう一球』山際淳司著

ノンフィクションの傑作短編集。1980年の秋、強豪校がひしめく秋の関東大会での、公立進学校の大躍進を描いた表題作は、客観的な視点で淡々と進む展開が新鮮。名作「江夏の21球」も入っています。昭和の高校野球とプロ野球の熱い雰囲気が味わえる。(角川文庫・616円)

第183回 全ての高校球児 悔いのない夏を

以下は下野新聞(2025年6月27日)に掲載された拙文です。

全ての高校球児 悔いのない夏を

18日に夏の全国高校野球選手権栃木大会の抽選会が行われ、対戦カードが決まった。この時期なると、夏本番の到来を実感する。高校野球のファンだが、全国大会よりも地方大会の方に興味がある。強豪校同士のレベルの高い試合も、部員がぎりぎりのチームや連合チームの試合を見るのも楽しい。

私は小中学生対象の学習塾を経営しているが、毎年、当塾の卒業生の高校球児がいる。彼らの活躍を追い、応援している。球場に足を運び、現地で応援することもある。卒業生たちの成長した姿を見たり聞いたりすることは大きな喜びだ。

現在、当塾の卒業生たちは、公立・私立合わせて4高校の野球部に所属している。3年生も数人いる。彼らを、そして全ての高校球児を応援したい。球児のみなさん、今年の夏を、悔いのない、熱い夏にしてください。