第232回 半藤一利・宮部みゆき著『昭和の10大事件』

半藤一利さんと宮部みゆきさんの対談集『昭和の10大事件』(東京書籍)を読む。
この本は2015(平成27)年に発行された。

歴史探偵の半藤一利さんは1930(昭和5)年生まれ、ミステリー作家の宮部みゆきさんは1960(昭和35)年生まれ。
お二人は高校の同窓生(都立墨田高校、半藤さんは前身の都立七中)だそうだ。

なお、半藤さんは2021(令和3)年に他界されている。

この対談集で取り上げられた時期は、1927(昭和2)年の金融恐慌から1989(昭和64)年の宮崎勤事件まで。

昭和は戦前と戦後ではかなり違っている。
約63年間もあったのだから当然だ。

とくに興味深かった章は、9回目の「高度経済成長と事件 ~公害問題・安保騒動・新幹線開業~」だ。
高度経済成長期は経済優先で、負の面である公害問題が表面化して、日本各地の海や川が汚染されていく。
隅田川などをはじめとした東京の川は、「真っ黒のコールタールみたいで、メタンガスのようなものが湧いていました」という宮部さんの発言には驚かされる。

『昭和の10大事件』は、楽しく、興味深く、学びが多い対談集だった。

第231回 横山光輝著『鉄人28号』

横山光輝著『鉄人28号 原作完全版』(潮出版社)の第1巻、「鉄人28号誕生」を読む。
『鉄人28号』のマンガを読むのは初めてだ。

私にとって、横山光輝といえば『三国志』(文庫版で全30巻)だ。
以前は塾の教室に『三国志』を置いていた。
休み時間になると塾生たちは夢中になって読んでいた。
多くの塾生が手にしたので、ぼろぼろになってしまったくらいだ。
けれど、いつの間にか読む塾生がいなくなってしまったので、現在は教室には置いていない。

『鉄人28号』は横山光輝の出世作だ。
この作品があったから『水滸伝』『三国志』などが生まれたのである。

さて、実際に読んでみると、やはり「昔のマンガ」という印象を受けた。
どうしても古臭い印象が拭えないのだ。

意外だったのは、絵柄が『三国志』とまったく違っていたことだ。
『鉄人28号』の絵は、手塚治虫が描く、丸みを帯びた絵とそっくりなのである。

ネットには、横山光輝は手塚治虫に影響を受けマンガ家を志し、手塚との交流もあったと書かれていた。
なるほど、初期の横山光輝は、手塚治虫から大きな影響を受けていたのである。
そこから時間をかけて、独自の絵柄、独自の作風を確立していったのだろう。

久しぶりに『三国志』を読みたくなった。

第230回 「豊臣」撮影神社 かやぶき修復を

以下は下野新聞(2026年2月15日)に掲載された拙文です。

「豊臣」撮影神社 かやぶき修復を

過日の本紙「雷鳴抄」で、NHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」が益子町の綱神社で撮影されたことが紹介されていた。このコラムを読み、数十年ぶりに綱神社を参拝した。

綱神社と同じ敷地内にある大倉神社は、室町時代の1520年代に再建されたと言われている。両神社とも国指定重要文化財で、曲線的なかやぶき屋根が特徴だそうだ。綱神社も大倉神社も屋根の傷みが激しく、私が訪れた時は屋根にシートがかぶせられていた。

現在、かやぶき屋根を修復するために、地元の修理委員会がクラウファンディング(CF)で寄付を募っている。目標金額は500万円、募集期間は2月1日から3月31日までだそうだ。私は募集期間の初日に寄付した。貴重な歴史遺産を次の世代につなぐためにも、このプロジェクトが成功することを願っている。

第229回 池田功著『啄木 新しき明日の考察』

池田功著『啄木 新しき明日の考察』(新日本出版社)を読む。

大逆事件(1910)時の啄木の思想や行動を詳しく知りたかったのでこの本を読むことにした。

私にとって、歌人といえば石川啄木。
啄木は一番好きな歌人だ。

啄木は26歳で亡くなるのだが、文学の活動期間はわずか10年ほど。
この間に、彼の思想はどんどん進化してゆく。

池田功氏は本書で、啄木は「世間的には評価されない人間に対して憐憫の情を持ち、そのことをきちんと表現している」と述べている。
そのようなところが啄木短歌の魅力なのかもしれない。

『啄木 新しき明日の考察』は、とても興味深い一冊だった。
この後は、同じ著者による『啄木日記を読む』(新日本出版社)を読むつもりである。

第228回 烏谷昌幸著『となりの陰謀論』

烏谷昌幸著『となりの陰謀論』(講談社現代新書)を読む。

この本は以下の四章からなっている。

第一章      陰謀論とは何か

第二章      陰謀論が生む「パラレルワールド」

第三章      「陰謀論政治」はなぜ生まれるのか

第四章      陰謀論を過小評価してはならない

著者は本書で、陰謀論を歴史的な視点も踏まえて丁寧に解説する。
そして、陰謀論を甘く見てはいけないと語り、「陰謀論研究の裾野を広げていく必要がある」と結論づけている。

陰謀論が政治に悪影響を及ぼしているのは、トランプ独裁が進むアメリカを見ればよくわかる。
残念ながら、世界も、そして日本も同じような流れになっている。

陰謀論が大きな問題となり世界を変えてしまったのは、インターネットの普及が大きい。
たいへん便利なインターネットだがマイナス面も大きいのである。
しかし、もうインターネットのない世界には戻れない。

この先、世界はどうなってしまうのか?
正直、とても不安である。

多くの人が「陰謀論とは何か」ということを考え、研究者が書く本(専門書ではなく本書のような一般向けの本)を読むことが必要なのではないだろうか。
その意味でも、本書は最高の入門書だと思う。

第227回 『昭和二年生まれの流儀』

城山三郎さんと吉村昭さんの対談集『昭和二年生まれの流儀』(中央公論新社)を読む。

城山さんと吉村さんは1927(昭和2)年生まれ、もちろんお二人は他界されている。

歴史小説家であるお二人の対談は興味深かった。
とくに戦時中の話はとても貴重である。

戦争が進むに従い、新聞の論調が戦争を煽る方向に変わっていったこと、国民が戦争に熱狂していったことなどは、現代に生きる私たちも知っておくべきだ。
けっして軍部の暴走だけの問題ではなかったのである。

今の日本を見ていると、戦前と同じような雰囲気になっているようでとても心配である。
いつまでも平和な日本であってほしい。

第226回 『モーム短篇選(上)』

一番好きな外国人の作家は、サマセット・モーム(1874~1965)である。
モームの作品は、学生時代の頃から20代にかけて熱心に読んだ。

今回、モームの作品を久しぶりに再読した。
読んだ本は、生方昭夫編訳の『モーム短篇選(上)』(岩波文庫)である。

上巻には6つの短編が入っている。
内容をすっかり忘れていたので、とても新鮮な気持ちで読むことができた。

モームの魅力は、そのストーリーの巧みさである。
最初はちょっと読みにくいかもしれないが、物語の世界に入るとページを繰るのが止まらなくなる。

そして、最後はあっと驚く鮮やかなオチで終わるのだ。

モームのもう一つの魅力は、皮肉な人間観察だ。
地位や名誉、世間体を第一に考える人間、いわゆる「俗物」に対しての痛烈な皮肉は読んでいて気持ちがいい。

上巻を読み終えたので、これからは下巻を読む予定だ。
モームの短編はたくさんあるので、1日に1~2作品のペースで再読してゆきたいと思う。

第225回 衆院選まで、あと4日

衆院選まで、あと4日となった。
今回の衆院選の結果によっては、日本という国が大きく変容してしまうかもしれない。

高市首相は、憲法改正をし、憲法に自衛隊を明記しようとしている。
これは、日本が戦争をする国になるということである。
その先は徴兵制とつながるのだ。

日々、子どもたちと接している者として、子どもたちが戦争に行かなければならなくなってしまうのは絶対に嫌だ。

現政権による憲法改正には反対である。

第224回 茅葺き屋根復興プロジェクト

益子町の大羽地区には、歴史のある綱神社と大倉神社が鎮座している。
両神社は、国指定重要文化財だ。

両神社の茅葺き屋根の痛みは激しく、現在、綱神社・大倉神社修理委員会がクラウドファンディングで修復資金を集めている。
実施期間は、2月1日から3月31日まで、目標金額は500万円だそうだ。

先週、綱神社と大倉神社を参拝したが、茅葺き屋根にはシートが被せられていて、傷みの激しさがよくわかった。

実施開始日の今日、さっそく資金援助を行った。
このプロジェクトが成功することを祈っている。

第223回 群ようこ著『老いとお金』

群ようこ著『老いとお金』(角川文庫)を読む。

ときどき、無性に群ようこさんのエッセイが読みたくなる。

今回読んだのは、老いとお金の話。

お金に対する考え方や使い方、身内とのトラブル、そして絶縁など、「ここまで書いてしまって大丈夫?」と心配になってしまうほど、自分をさらけ出している。
だからこそ、おもしろいのだが。

群さんは、やはり本物の「物書き」なのである。

おもしろくて、たくさん付箋を貼ってしまった。

生きてゆくのにはお金は必要だが、それに囚われすぎてしまうのも嫌だ。

いろいろと考えさせられた一冊だった。