第147回 童門冬二著『歴史に学ぶ「人たらし」の極意』

『歴史に学ぶ「人たらし」の極意』(青春新書)を読む。

福島正則、徳川家康、加藤清正、伊達政宗、黒田官兵衛など、主に戦国武将の「人たらし」のエピソードが紹介されている。
田中角栄元首相など、昭和の政治家のエピソードも。

江戸時代の儒者である荻生徂徠は、歴史を学ぶ楽しみとして以下のように語っている。

〈炒り豆をかじりながら古今の人物を罵るは最大の快事なり〉

この本はその反対、歴史上の人物の魅力が書かれている。

「人たらし」になろうとして他者と接するのではなく、自然とそのような振る舞いができる人物こそが本物なのだろう。

読んでいて楽しい本だった。

 第146回 子どもとデジタル教育

以下は下野新聞(2025年1月6日)に掲載された拙文です。

デジタル教育の負の面考えたい

コロナ禍を経て教育のデジタル化が進んだ。学校では学習用端末が1人1台与えられている。2025年度からは中学校でも新しい教科書が使用されることになり、これまで以上にデジタル化が進むだろう。

もちろん、動画や音声が加わることで内容の理解が深まるというメリットはある。しかし、教育のデジタルが進みすぎるとマイナス面もたくさんあるのだ。実際、デジタル教育先進国のスウェーデンでは、子どもたちの学力低下が深刻で、紙の教科書の復活が叫ばれているそうだ。

全体的な傾向として、子どもたちの読解力や漢字を書く力、集中力などが低下していると感じる。教育の基本は「紙の本を読む」「紙の辞書を引く」「鉛筆で紙に文字を書く」だ。デジタル社会が進む今こそ、「子どもとデジタル教育」について考えてゆきたいと思う。

第145回 2024年の3冊

当ブログの読者のみなさま、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

2025年の最初のブログは、「2024年の3冊」です。

万城目学著『八月の御所グラウンド』(文藝春秋) ブログ第78回

永井紗耶子著『きらん風月』(講談社) ブログ第97回

本郷和人・島田裕巳共著『鎌倉仏教のミカタ』(祥伝社新書) ブログ第114回

以上の3冊は当ブログで書きました。
是非、お読み下さい。

2025年もすばらしい本に出会いたいと思います。

第144回 イチローさん、すごい!

今回のTBSのドキュメンタリー番組「情熱大陸」は、2夜連続のスペシャル放送だった。

密着取材された人は、元メジャーリーガーのイチロー氏である。

現在、イチロー氏の肩書は、「マリナーズ会長付特別補佐インストラクター」。

51歳のイチロー氏は、現在も現役時代とかわらないトレーニングを続けている。

松井秀喜氏(50)との対談がおもしろかった。

イチロー、松井の両氏は、すべてがデータ化、数値化され、選手が自分の頭で考えなくなってしまったメジャーリーグの野球は退屈でつまらないと言う。
そして、日本のプロ野球がメジャーリーグの野球のようになってしまうことを恐れていた。

数値化できないもの、感性を大切にする両氏は、さすがだと思った。
一流のスポーツ選手は「芸術家」でもあるのだ。

現在、イチロー選手は高校生の指導も行っている。
高校生たちに、以下のようなことを話していた(内容は正確ではありません)。

自分の指導で、野球が上手くなってくれるのはうれしい。
でも、自分はそれよりもっと先を考えている。
君たちには人の痛みがわかる人になって欲しい。

つまり、「野球を通して、人間としても成長して欲しい」ということだろう。

まったく同感だ。

私も、日々の学習指導を通して、子どもたちには「人として成長して欲しい」と願っているからだ。

今回の「情熱大陸」は予想以上におもしろく、学びも多かった。

第143回 読んでいる本、年末年始に読む本

2024年もあと10日。
26日からは中学3年生の冬期講習会が始まり忙しくなる。

そのような中でも、いや、そのような時だからこそ、読書は通常運転でゆきたいと思う。

現在読んでいる本、そして年末年始に読もうと思っている本が以下の8冊。

島田雅彦著『大転生時代』(文藝春秋)

童門冬二著『歴史に学ぶ「人たらし」の極意』(青春出版)

黒田杏子著『第一句集 木の椅子』(コールサック社)

久江雅彦・内田恭司編『小選挙区制は日本をどう変えたか』(岩波書店)

田中優子著『蔦屋重三郎 江戸を編集した男』(文春新書)

ペン編集部『蔦屋重三郎とその時代。』(CCCメディアハウス)

嵐山光三郎著『芭蕉の誘惑』(JTB)

小池光著『新選 小池光歌集』(現代短歌文庫)

小池光先生は、私の短歌の師匠である。

というわけで、年末年始は以上8冊を時間を見つけて読んでゆきたい。

第142回 やっぱり「箱根駅伝完全ガイド」

毎年12月に、ベースボール・マガジン社の「箱根駅伝完全ガイド」を買っていた。

この雑誌はとても良いのだが、ここ数年、値上がりが激しかった。

購入し始めた頃は、税込み価格で800円から900円くらいだったような気がする。
それが、2022年用は1,000円、2023年用は1,180円、そして2024年用は1,390円だった。

この値上がりにはさすがについていけず、昨年は他の雑誌を購入した。

それで今年は?

2025年用は、再度ベースボール・マガジン社の「箱根駅伝完全ガイド」を購入した。
同じような雑誌の中で、ベースボール・マガジン社のものが一番良いからだ。

2025年度用の「箱根駅伝完全ガイド」は1,320円だった。
昨年よりも安くなっていて、ちょっと驚いた。
ここ数年の値上げで売上が落ちたため、値下げしたのだろうか?

円安、燃料費や輸送費の高騰などの理由で、本や雑誌、新聞の値上げが激しい。
食料品やその他の物も値上がりし、庶民はなかなか苦しいのである。
政治家のみなさんには、そこのところを分かってほしい。

それはさておき、2025年の1月2日と3日を楽しむために、「箱根駅伝完全ガイド」を読んで、しっかりと予習をしておこうと思っている。

第101回箱根駅伝まで、あと15日!

第141回 『俺たちの箱根駅伝 下巻』読了

池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝 下巻』(文藝春秋)読了。

上巻373ページ、下巻331ページ、合計704ページの大著。
最初から最後まで、わくわくどきどきの小説だった。
そして、池井戸作品らしい感動的な終わり方。

この作品は、そう遠くない日に映画かテレビドラマになると思う。
その時は必ず視聴したい。

今度の箱根駅伝では、関東学生連合にも注目したいと思う。

第140回 2025年の大河ドラマは「べらぼう」

今年の大河ドラマ「光る君へ」は15日に終わった。
舞台は大河では珍しい平安時代、主人公は紫式部(吉高由里子)だった。
物語は途中、弛緩したような気もしたが、最後まで完走することができた。

さて、2025年の大河ドラマは、江戸中期のプロデューサー、蔦屋重三郎(1750~1797)である。
大河ドラマで、この時代の、しかも文化を扱うことは初めてなのではないか?

江戸文化、江戸時代の文化史に興味がある私としては、非常にうれしいのである。

大河ドラマ「べらぼう」をさらに深く楽しむために、現在、予習中だ。

最初に読んだのが、伊藤賀一著『これ一冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』(
Gakken)。

蔦屋重三郎や浮世絵、江戸の出版文化に関する本をたくさん読みたいと思う。

第139回 子どものSNS利用について

以下は東京新聞(2024年12月14日)に掲載された拙文です。

子のSNS規制必要だ

オーストラリア議会は11月28日、16歳未満の交流サイト(SNS)利用を禁止する法案を可決した。日頃、小中学生と接している者として大変、興味深い法案だ。

今の子どもたちの一番の課題は、SNSや動画サイトとの付き合い方といえる。子どもたちは、これらのことに多くの時間がとられてしまい、学習や読書をする時間が少なくなっている。以前と比べると、子どもの語彙力や読解力は低下傾向にあると感じる。

成長期の子どもたちが、SNSや動画サイトと上手に付き合って生活するのは非常に難しい。オーストラリアのように、SNSの利用を法律で禁止するのは行き過ぎかもしれないが、日本でも何らかの規制が必要だろう。社会全体で、この問題について真剣に考えるべきだと思う。

第138回 池井戸潤著『俺たちの箱根駅伝』

池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝 上巻』(文藝春秋)を読む。

池井戸さんの小説やドラマは本当におもしろい。
複雑な人間関係、複数のストーリーが同時に進んでいくなど、読者や視聴者を最後まで飽きさせないのだ。
そして、最後には読者や視聴者を幸せな気持ちにしてくれる。

池井戸さんの小説は娯楽作品の王道をいくのだ。
たくさんの作品がテレビドラマ化されるのも当然である。

『俺たちの箱根駅伝』も、関東学生連合チームの監督や仲間たちとの葛藤、箱根駅伝を放送するテレビ局の複雑な人間関係が同時進行し、そして2つの物語が交錯し、展開していく。

主要な登場人物の前に次から次へと困難が立ちはだかる。
彼らは困難の一つ一つを乗り越え、成長していく。
わくわくする群像劇だ。

実際の箱根駅伝まで1か月を切ったこの時期に、『俺たちの箱根駅伝』を読むことができて幸せである。

さあ、これから下巻を読もう。