以下は東京新聞(2025年7月12日)の読書欄、「月イチ読書会」に掲載された拙文です。
本当はもう少し長い文章なのですが、紙面の都合で短くなった上で掲載されました。
『スローカーブを、もう一球』山際淳司著
ノンフィクションの傑作短編集。1980年の秋、強豪校がひしめく秋の関東大会での、公立進学校の大躍進を描いた表題作は、客観的な視点で淡々と進む展開が新鮮。名作「江夏の21球」も入っています。昭和の高校野球とプロ野球の熱い雰囲気が味わえる。(角川文庫・616円)
以下は東京新聞(2025年7月12日)の読書欄、「月イチ読書会」に掲載された拙文です。
本当はもう少し長い文章なのですが、紙面の都合で短くなった上で掲載されました。
ノンフィクションの傑作短編集。1980年の秋、強豪校がひしめく秋の関東大会での、公立進学校の大躍進を描いた表題作は、客観的な視点で淡々と進む展開が新鮮。名作「江夏の21球」も入っています。昭和の高校野球とプロ野球の熱い雰囲気が味わえる。(角川文庫・616円)
以下は下野新聞(2025年6月27日)に掲載された拙文です。
18日に夏の全国高校野球選手権栃木大会の抽選会が行われ、対戦カードが決まった。この時期なると、夏本番の到来を実感する。高校野球のファンだが、全国大会よりも地方大会の方に興味がある。強豪校同士のレベルの高い試合も、部員がぎりぎりのチームや連合チームの試合を見るのも楽しい。
私は小中学生対象の学習塾を経営しているが、毎年、当塾の卒業生の高校球児がいる。彼らの活躍を追い、応援している。球場に足を運び、現地で応援することもある。卒業生たちの成長した姿を見たり聞いたりすることは大きな喜びだ。
現在、当塾の卒業生たちは、公立・私立合わせて4高校の野球部に所属している。3年生も数人いる。彼らを、そして全ての高校球児を応援したい。球児のみなさん、今年の夏を、悔いのない、熱い夏にしてください。
新堂冬樹著『直木賞を取らなかった男』(光文社)を読む。
新堂冬樹さんの作品は書店で何度も見かけるが、これまで読んだことはなかった。
今回、初めて読んだ。
これは自伝的な作品らしい。
新人作家の日向誠は、編集者の磯川諒介の強いすすめで、あえて直木賞をあきらめ、売れる作家への道を選択する。
ここから、売れっ子作家としての人生が始まる。
「直木賞を取れなかった男」ではなく、自らの意志で「直木賞を取らなかった男」になった日向。
長年にわたる日向と磯川の友情が美しい。 ラストまでぐいぐい読ませる作品だった。
6月14日(土)、ベルーナドームで行われた「埼玉西武ライオンズ対中日ドラゴンズ」の試合を観戦した。
東京に住む大学生の次男とJR新秋津駅で待ち合わせをして、久しぶりに親子で観戦した。
次男が中日ファンということもあり、ビジターファンが多い一塁側の内野席に座った。
ビジターファンが多い一塁側といっても、普段は西武ファンもたくさんいるのだが、この日は違っていた。
観客のほとんどが中日ファンなのである。
ドラゴンズファンは、ユニフォームに竜や言葉を刺繍している人の割合が高く、なかなかすごいのである。
正直、ちょっと恐い? 竜だし?
実は、そんなドラファンを見るのも楽しい。
ドラゴンズの本拠地バンテリンドームで試合を観戦したことのある次男の話では、ユニフォームに刺繍をしている人の割合は関東のファンが多いそうだ。
しかも、関東のドラファンが圧倒的に「熱い」のだそうだ。
中日の試合はこれまでたくさん現地で観戦したが、今でも忘れられないドラファンが何人もいる。
この日も、これからも忘れないだろうと思うドラファンを見た。
生観戦の楽しみの一つである。
試合は2-1で西武の勝利。
締まった良い試合だった。
チケットは「完売」だったようである。
本当に楽しい一日となるはずだった。
次男が財布を落とさなければ。
「リンボウ先生」こと林望先生の『節約を楽しむ』(朝日新聞社)を読む。
私は学生時代に、林先生の『イギリスはおいしい』(平凡社)を読んだ。
それ以降、すべてではないが、林先生の作品を読んできた。
その林先生は、もう76歳だそうだ。
実に感慨深い。
『節約を楽しむ』は、林先生が考える「お金の使い方」「節約術」についての本だ。
「筋金入りのへそ曲がり」の林先生の考え方に共感した。
私も、林先生と似たような考え方で生きている。
さて、この本が若い人たちに受け入れられるかどうかはわからないが、ぜひ二十代・三十代の若い人たちに読んでほしい。
社会人の長男と大学生の次男に紹介しようと思う。
以下は東京新聞(2025年5月24日)に掲載された拙文です。
「ずっと電子辞書とともに」(5日発言欄)を読んで、「上には上があるものだ」と思った。
私は新聞や雑誌が好きで、東京新聞と地元紙の2紙を、さらに週刊誌1誌を購読している。また、図書館で購読紙以外の全国紙に、購読誌以外の週刊誌や月刊誌に目を通すようにしている。大きな出来事があった時は、図書館で新聞各紙を読み比べることもある。この時代、自分はそれなりに読んでいる方かと思っていた。
しかし投稿者は、元日と憲法記念日、8月15日には新聞7紙を入手し、吟味しているという。とてもかなわないと脱帽した。年齢も住む場所も違うが「東京新聞の読者」という共通点がある。私も見習って、さらに日々精進していきたいと思う。
東京やなぎ句会編『友ありてこそ、五・七・五』(岩波書店)を読む。
東京やなぎ句会は、作家や俳優、落語家たちによる、とても有名な句会である。
入船亭扇橋(俳号・光石)が宗匠、永六輔(俳号・六丁目)、小沢昭一(俳号・変哲)、柳家小三治(俳号・土茶)など、有名な方々の素人句会だ。
この本は、「東京やなぎ句会」として3冊目の本だそうだ。
『友ありてこそ、五・七・五』からは、とても楽しい雰囲気が伝わってくる。
この本が出版されたのは2013年、メンバーのほとんどの方が鬼籍に入られて、現在は「東京やなぎ句会」自体はなくなってしまったそうだ。
句会や歌会は本当に楽しい。
私は、句会と歌会の両方に参加しているが、毎回、仲間から多くの刺激を受けている。
句会(年4回)は約15名、歌会(奇数月)は8名でやっている。
今の句会には、かなり昔の当塾の卒業生のお母様が参加されている。
会場で再会した時は、本当に驚いた。
7月に歌会がある。
今から楽しみにしている。
佐川恭一著『学歴狂の詩』(集英社)を読む。
私は、佐川恭一という作家は知らなかった。
この本は小説ではない。
ノンフィクションである。
帯の後ろ側には、森見登美彦さんの紹介文がある。
「受験生も、かつて受験生だった人も、みんなが読むべき異形の青春記。」
学歴にとらわれ、不惑になってもその傷が癒えない作者が、自分の思いを、そして、これまで接してきた友人たちへの愛を熱く語っている。
「学歴教」というものにとらわれてしまうと、そこから脱会するのがいかに大変か、いかに人生を狂わせてしまうのかが分かる本。
受験生は、とくに大学を目指す高校生は、学歴にとらわれがちである。
モチベーションを上げるためには大切でもあるのだが、それも行き過ぎると毒になる。
人生が狂ってしまう人もいるのだ。
このことは、大人が子どもたちに教えておくべきである。
これは、作者も本書で強調していた。
『学歴狂の詩』、本当におもしろい「異形の青春記」だった。
6月3日に、長嶋茂雄さんがお亡くなりになられた。
89歳、日本の戦後を代表するスーパースターだった。
6日の東京新聞は、20ページ中6ページで長嶋さんの訃報や偉業を伝えていた。
1面でも大きく扱い、コラム「洗筆」や社説でも取り上げていた。
長嶋さんは、「記録よりも記憶に残る選手」と言われていたが、残念ながら私は監督としての長嶋さんしか知らない。
それでも、長嶋さん関連の本はたくさん読んだので、そのすごさは感じていた。
写真はその一部。
監督としても華がある方で、選手よりも長嶋さんの方が目立っていた。
長年にわたり日本を明るくされた方である。
「ミスタープロ野球」の長嶋さんのご冥福をお祈りいたします。
柳広司著『パンとペンの事件簿』(幻冬舎)を読む。
物語の舞台は大正時代、1910の大逆事件後の話だ。
社会主義運動は「冬の時代」を迎え、社会主義者の堺利彦が「売文社」を経営し、厳しい時期をしのいでいた。
この「売文社」が舞台で、青年の「ぼく」の視点で物語は進む。
堺利彦をはじめ、大杉栄や荒畑寒村など、実在の人物も登場する。
本当は暗くて陰鬱な時代であったはずだが、この小説はときにユーモアを交えて、軽快に進んでゆく。
とても読みやすかった。
言論の自由や個人の尊厳などが少しずつ失われてゆきつつある今、この小説を読む価値はある。
ぜひ多くの人に読んで欲しい。
参考文献にあげられていた、黒岩比佐子著『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(講談社)は、家のどこかにあったはず。
探して、今度は丁寧に読み直したいと思う。